Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Paul Auster ”Moon Palace” -3

夜中になってやや回復してきたので,ご無沙汰気味の「ムーン・パレス」を5ページほど読む。

伯父さんの葬儀で散財し,生活のために譲り受けた本をほとんど売り払ってしまったマーコくんがいよいよ極貧生活に突入する。卒業までの1年間を残された財産でやり繰りしようとするのだが,電話を失い,電気は止められてしまうこととなる。明かりはロウソク,冷蔵庫は窓に吊り下げられた手提げ袋(冬季は凍るらしい)を用いてなんとか窮状を乗り切ろうとするが,それさえ夏には使えなくなってしまう(当たり前だ)。そこで知恵を絞り,夏季でも腐らず栄養が取れ,かつ安価な究極のメニューを考え出し(粉ミルクと少量パックのパン,卵それにコーヒーだ),それをひたすら繰り返し食べることで生き延びようとする。だが,そんな過酷な生活は,6月に70キロあった彼の体重を8月には56キロまで貶めてしまう(ちなみに身長は180センチ以上)。

ここまで追い詰められながらも,彼は自分の窮状を決して友人には告げようとしないし,奨学金や率の良いバイトを探すといった手段を取ろうとはしない。あくまで与えられた情況の中でどうやって生き抜くかということに固執する。そうしなければ生きていけないという何かがあるのだ。ま,若さですかね,と言ってしまえばそれきりかもしれないが,自分がかなり失ってしまったものであるだけに,惹きつけられてしまうんだよね。