Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Paul Auster ”Moon Palace” -5

昨日書いたシラノ・ド・ベルジュラックの旅行記が実在していた。うひゃー。1657年刊なので,「ガリヴァー旅行記」より70年くらい前。どちらも風刺が効いているようだけど,ベルジュラックの方がスウィフトよりは上品そう。

「日月両世界旅行記 第一部」 (岩波文庫) ISBN:4003250613

ユートピア旅行記叢書第一巻/別世界または日月両世界の諸国諸帝国」 (岩波書店) ISBN:400026091X

「ムーン・パレス」今日は3ページちょっとだけ。ヨワヨワ。だがマーコはもっと弱っている。アパートの退去勧告をくらい,所持金は残り37ドル。エネルギーの浪費を避け,宇宙飛行士たちの帰還パレードの際も,アパートに引きこもっている。あまりの貧乏ゆえに,先のことが何も考えられなくなり,文章も手に付かない(インクの欠乏が怖い故)。ついには最後にたった一つ残された形見のクラリネットにまで手をかけようとするが,事前に楽器屋で値段を見て,思い留まる(売ったところで,家賃にすら値しないのだ)。そしていつものように茹でようとした2個の卵のひとつを手からすべり落としてしまったとき,とうとう張り詰めていた気持ちが崩壊する。最後の卵だったのだ。22歳のコロンビア大学生。あまりに悲惨すぎる。このリアルさはやはり,オースターのパリ極貧体験に基づくものだろうか。