Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Patricia Highsmith ”Eleven”  161~194p -5 読了

  • "The Barbarians" ---ウィークデーはリサーチャーとして働き、土曜は父親の経営する金物屋を手伝っているという男にとって、唯一心穏やかに過ごせるはずの日曜。なのに、アパート下の広場で布袋腹の男たちが騒々しく野球を始め、アパートの植え込みまで踏み荒らすようになってからは、趣味の絵画を描くことさえ適わなくなった。紳士的に話をつけようとしても、野蛮な男たちは聞く耳を持たず、警察も当てにならない。思い余って男が取った行動とは・・。日常から一歩逸脱してしまったときに受ける、しっぺがえしの恐怖。どこにでもありそうで、誰でも陥ってしまいそうというところが怖い
  • "The Empty Birdhouse" ---何もいないはずの鳥小屋にいる黒い目の動物。それは自分が過去に封じ込めていた「何か」であった。しょせん、過去から逃れることはできないのか・・「それ」が最後には自分を狂気に引き込んでいくようで、また恐ろしい

一作一作違った形の恐怖がひしひし迫ってくる珠玉の短編集ということだが、読解力が今ひとつのせいか、その切れ味をしっかり味わえたのかどうか、どうも怪しい。冒頭に掲載されているグレアム・グリーンの解説によると、狂気のシッターが活躍(?)する「ヒロイン」など、最初に雇い主の婦人が彼女の面接をするあたりから、"Get rid of her before it's too late" と叫びたくなったそうだが、私にはとてもこの段階からそこまでの危なさは感じられなかった。読んでいるうちにジワジワとなんだか変だぞと思い始めて、最後にきっちり作者の思惑通り、してやられるという感じか。まぁそれはそれで楽しく読めたし、もう一回、どの辺から怪しくなるのかと考えながら再読するのも面白いかもしれない。