Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Salman Rushdie ”Midnight’s Children” 619~647p -23 読了

インドが独立を果たした1947年8月15日の午前12時ジャストに生まれたサリーム・シナイが、ドイツ留学の経験を持つムスリムの祖父アーデム・アジズの代から遡って、現在の妻パドマに語る半生記。

人口6億を超えるインドで同じ時刻に生まれた1000人あまりの子どもは、みな何らかの超能力を持っているという設定からぶっ飛んでいるのだが、それに加えてインド人看護婦と英国人医師の歪愛の結果、サリームは本当のアジズの孫であるシバと取り替えられ、アジズの孫として育てられるというドロドロなお話。ムスリムのシバが貧しいヒンディの家庭で厳しく育てられ、強面の軍人として成長していく一方、サリームはキュウリのような鼻を持ち、片耳は聞こえず、足は不自由、指は学校の女子からのいじめによって失ってしまうというボロボロ状態ながらも、裕福な家庭で大人たちや妹の愛に囲まれて育つ。見た目がかなり??なだけでなく、根性もはっきり言って軟弱でカッコよくない。が、何度悲惨な目に遭ってもなぜかヘコたれず、図々しく逞しい。でもって、なぜかいつもピンチの時には、女性たちによってギリギリのところで助けられるという不思議くんなのである。そんな彼らの運命が、サリームの提案で始まったMidnight's Children Conferenceや、数度に渡る印パ戦争によって交錯していく。。

全体的に超常現象やら呪術的な要素が散りばめられている上に、インドの複雑な民族・政治問題まで絡んでくる。インドの混沌とした雰囲気が、サリームの半生という切口でメタファーを交えて語られる。まぁ荒唐無稽な話なのだが、それが返って妙なリアリティを感じさせるのは、インドという国そのもののためなのか、作者ラシュディの技なのか。

正直、インドの背景事情に詳しいわけではないので、頻繁に出てくる辞書にも載ってないようなインド由来の神々や古典の登場人物、インドやパキスタンバングラデシュの政治家や軍人たちの名には困惑したが、それでも最後までぐいぐいと読まされてしまった。600ページあまりの一冊丸ごと、ひとつのインドをお楽しみあれという感じ。面白かった。