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The Oxford Book of Modern Fairy Tales -8

  • Lucy Lane Clifford "The New Mother" 120~139p 読了

無邪気な二人の子供が,偶然出会った邪悪な少女に,秘密の匂いのする楽器とコビトの存在をちらつかされる。お前たちが悪い子になれば,楽器の音色を聞かせコビトも見せてやるというのだ。子供たちは少女に幻惑され,悪い子供になろうとする。母親は「本当に悪い子になったら,お母さんはあなたたちを置いて出て行く。そして,あなたたちの許にはガラスの目と木の尻尾をした『新しいお母さん』が来るのよ」と脅す。

子供たちは悩み苦しみながらも,邪悪な少女の誘惑を断ち切れず,母の言葉より,「母の言葉は単なる脅しにすぎない」という少女の言葉を信じてしまう。そして「一回だけ楽器の音色を聞き,コビトを見ることができたら,すぐにいい子に戻るから」と,少女の言うがままに,悪いことをしでかしてしまう。母のことを思いながらも,誘惑を断ち切れない子供たちの運命は・・?

どんなに反省しても,たとえたった一度だけの過ちだとしても,母の忍耐を越えてしまった悪さは取り返しがつかないという結末は救いがなく,恐ろしい。あの優しかったお母さんが私たちを置いていくはずがないという期待は脆くも裏切られ,新しいお母さんがやってくるときの不気味さといったら,ほとんどホラーの世界である。(‥;)

編者のアリソン・ルーリーによると,自分たちのいたずらに疲れ切ってイライラした親の姿が一時的にガラスの目をした怪物に思えたことのある人には,このお話の意味がおわかりでしょうと。いやはや。子供のイタズラを叱る親の姿は,子供にとってそんなにも恐ろしく映るということなのだろうか。だとしたら,これは子供だけでなく親にとってもコワイ話になるだろう。

作者のルーシー・レーン・クリフォードはヘンリー・ジェイムズの友人で,この話は彼の傑作「ねじの回転」の源泉のひとつと考えられているそうだ。