Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Paul Auster ”Moon Palace” 250~271p -25

マーコの父,ソロモン・バーバーはNYでの話合いのあと,自分が若かりし頃書いた小説 ”Kepler's Blood”をマーコに送る。

…to give me an idea of the extent to which his father's absence had affected his imagination. (←meはマーコ,hisはソロモン)

言わば,出生前に父を失うということが自分にどういう影響を与えたかを息子に示すために。主人公ジョン・ケプラーはもちろんジュリアン・バーバーことエフィングである。彼が西部に旅立ったあと,どういう運命が待ち受けていたか,残された息子(もちろんソロモン自身)はおろか,孫(マーコに当たる)の運命までを,18歳のソロモンが想像で描いたという代物。ケプラーは西部で密かに暮らす月人 Human (←このネーミングが何とも皮肉)たちと運命を共にし,妻と息子の元には帰らない決意をするという。そして18年後,残された息子が訪ねたとき,

I am a sprit man who came here from the moon.

と言って冷たくあしらう。これに逆上した息子ケプラーJr.は,なんと彼を殺害してしまうのだが,今度はケプラーとHumanの妻との間にできた息子ジャコミンがその現場を目撃し,その復讐を決意することとなる。ジャコミンはケプラーJr.の息子を誘拐し,自分の子供として育てる。そして最終的には,息子を訪ねて遙々やって来たケプラーJr.が,それとは知らずに自分の息子をライフルで撃ち殺してしまうとともに,自分自身もジャコミンに殺される。悲惨極まりない話だ。

…小説の中で自分自身に与えている役割,実生活においてもこの小説の中で追求しているテーマに関わる研究だけに没頭していることなどから,この小説がソロモンの人生にとっていかに大きなものであるかがわかる。しかしこの壮大な話は,21もの出版社から出版を断られたという。マーコとエフィングがあれほどのエネルギーを費やして完成させたジュリアン・バーバーの自叙伝も,結局は日の目を見ないわけだし,どこまで行ってもまったく救いのない話なのである。

しかしこれだけ世間には受け入れられなくとも,そこに「何か」があるというのがオースターの伝えたいところなのだろう。私自身,その「何か」に触れたいという気持ちで,ズルズルと彼の小説を読んでいるわけだし(笑)。あと30pあまりだ。