Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Paul Auster ”Oracle Night” 106~124p -9

Orrはタイムマシンの映画脚本の構想を練る。主人公は2人。テキサスの大牧場主の息子Jack。1895年時点で28歳。こちらはウェルズの主人公と同じような位置づけ。自らタイムマシンを発明し,未来へ飛ぶ。もうひとりはJill。22世紀半ばには20歳になると,誕生日の200年前にタイムトラベルするという儀式が義務づけられているという設定。JackとJillってネーミングはやはり,マザーグースから? 2人はともに1963年に辿り着き,ケネディ暗殺の現場に遭遇する。それを阻止しようとするJackにJillも協力するようになる。最終的に2人は恋に落ち,ともに'63年に生きることを決意するというような筋書き(何せハリウッド映画なのだ)。とにかく監督のBobby Hunterに気に入られるのが大前提。陳腐な出来だと思いながらも,何とかモノになりそうな感触を掴むOrr。

Graceが帰宅し,妊娠したらしいと告白する。前日の凄まじい嘔吐はつわりだったのだ。様子がおかしかったのも,妊娠のためかもしれない。現状では子供を産むのは難しいと言うGraceに,Orrはダッハウの悲惨な事例(死んだ赤ん坊にミルクをやろうとする母親の話など)を聴かせたり,ブロンクスのトイレで生まれゴミ箱に捨てられたというNewsdayの記事などを見せたりし,出産を迫る。理性的に考えればGraceに理があるのに,そこまで自分が出産にこだわるのは,

I had gradually succumbed to(~に屈服する) a kind of terminal hopelessness, a secret conviction that she would be better off without me. Having a child together would erase that anxiety and prevent her from wanting to decamp(逃亡する).

という思いのためだ。言い争った翌朝,Orrは反省し,朝食を用意して,決定権は君にあると妻に詫びる。すると,Graceは昨晩見た不思議な夢について語る。

2人がGraceの両親と不動産を探していて,一軒の家を訪れる。家の中を見て回るうちに,地下に通じる扉を発見し,2人で中に入る。柔らかなペルシャ絨毯が敷かれ,心地よい椅子と豪華なベッドが備え付けられたperfect little bedroom。そこに入るとなぜか異様に性的に高ぶり,2人で何度もsexに耽る。ふと気づくと,両親は立ち去り,部屋はロックされているという。さてどうしたもうかというところで,夫に起されたという次第。

Graceの出勤後,映画の脚本の構想をまとめ上げ,代理人のいるマンハッタンのSklarr Agencyへ持ち込む。マンハッタンに行くついでにJohnのところに寄ろうと電話をかけるが,足の調子が相変わらずで,明日にしてくれと言われる。

原稿を手渡したあと,所在なくヴィレッジ界隈を散歩した後,昔よく通ったWhite Horse tavern(居酒屋)で昼食をとる。するとそこには,文房具屋のChangがいるではないか。Changから閉店の経緯,中国を出獄した過去(文革で悲惨な目に遭った)を聞くうちに,杯を重ねてしまう。慌てて帰ろうとすると,Changは車で送ってくれると言う(言うまでもなく,車の車種はPontiacだ)。グデングデンのChangに

A man in your condition shouldn't drive. You're too potted(酔った).

と丁重に断ろうとするが,

M.R.Chang sober as a judge(まったくのしらふだ).

と押し切られ,Pontiacに乗り込む羽目になる。