Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Paul Auster ”Oracle Night” 169~190p -14

翌日の土曜,OrrはJohnとの約束通りJacobを見舞う。短い訪問にもかかわらず精魂ともに疲れ果て,すぐJohnに電話を入れる気にもならず,自宅へ向かう道すがらレキシントンへ。そこでPAPER PALACEと書かれた小さな店を見つける。先週の日曜までブルックリンにあったChangの文房具店と同じ名前。まさかという思いを抱きつつ店内に入ると,そこにはやはりChangがいた。Congratulations. The Paper Palace is back on its feet.と祝福を表わすが,Changはお前はもう友達じゃないと連れない。

中華街のクラブで,お前は新しい商売を侮辱し,女に触り,挨拶もせずに帰ったとChangは言う。Orrはその場の状況を言い繕うが,Changは一切取り合おうとしない。You give big hurt to my soul.ととりつく島なし。

そこで店を出ればいいのに,ポルトガル製ノートの魔力に取り憑かれたOrrはその在庫を確認せずにはいられない。見ると,赤いのが一冊残っている。レジで改めて謝罪しながらそれを手渡すと,ChangはThis one not for sale.と言う。Orrは10ドル札をカウンターに広げてみせ,ここに5ドルと書かれているからお釣りをくれと迫るが,Changはこの最後のポルトガル製ノートは別客のために取り置いていたものなのでお前には売れないと言う。それなら店に出しておくなよとOrrが強引に迫ると,じゃあ代金は1万ドルだと言い放つ。

あまりの言いようにOrrもついカッとなり,ノートの奪い合いに。Orrの放ったパンチは当たらず,代わりにChangの繰り出すkarate chop(って英語でもそう言うのだな(^_^;))が炸裂。結局こてんぱんにやっつけられ,次は必ず殺すぞ,I cut out your heart and feed it to the pigs.という捨てぜりふまで吐かれ,Orrは這々の体で逃げ帰る。

帰宅後,Changとの出来事はGraceに一切話さないまま。幸い,彼女にも身体の傷に気づかれずに済む。

日曜の朝,Johnに電話をかけ,Jacobとの面会の件を報告。以前もらった原稿”The Empire Bones”を地下鉄で失ってしまったことも告白する。Johnはカーボンコピーを取っているので気にするな,後日郵便で送ってやると言ってくれる。

月曜,最後に青いノートに向かう。既に全96ページ中,40ページが埋められている。日曜のChangとの酷い再会からOrrは

It was that the notebook was a place of trouble for me, and what ever I tried to write in it would end in failure.

と悟る。Bowenの話もThe Timemachineのリメイクも挫折。その度に茫然自失となる自分に気づいたのだ。Changに最後のセリフを言われたとき,Orrはノートを手放さなくてはならないと決意した。

If nothing else, I felt I have to prove to myself that I wasn't a coward.

机にGraceのアルバムを引っ張り出し,赤ん坊の頃の写真から順々に眺めていく。3-D ViewerにハマったJohnの義弟(Johnの2度目の妻Tinaの弟)と同じような気持ちを抱きながら。Graceの成長を1時間以上眺めて,ペンを取り机に向かったとき,あることが突然Orrの頭を過ぎり,その話を青いノートに書き進めていく。

It began and ended with Trause. I could have been wrong, of course, but now that the crises seemed to have passed, I felt strong enough to entertain the darkest, most unsettling possibilities.

Imagine this, I said to myself. Imagine this, and then see what comes of it.

話を書き上げ,ノートを破いてgobage bag/ゴミ袋に詰めると,Orrは人気のないChangの店を確認しに行き,帰り道でゴミ箱に袋を投げ入れる。

帰宅後,Johnが昔話してくれたフランスのある詩人の話を思い出す(彼のパリ滞在時に知り合った人物らしい)。溺死した小さな子供の詩を出版した2ヶ月後,その男の娘が実際に溺死した。男は自分を責め,非凡な才能に恵まれた作家であったにもかかわらず,以後二度とペンを持たないと誓ったのだという。

Words could kill, he discovered. Words could alter reality, and therefore they were too dangerous to be entrusted to a man who loved them aboube all else.

当時は,そんなことありえないとJohnに言い放っていたOrrだが,今は。。ノートと出あってから9日,ノートを廃棄してそれで何もかも終わりだと思っていたが,そうではない。

The story was just beginning -- the true story started only then, after I destroyed the blue notebook・・・

Orrは,青いノートに書いた小説内小説”Oracle Night”の主人公Lemuel Flaggを思い起こす。あの何もかも見えすぎてしまった故に自らを滅ぼすこととなった盲目の男を。

・・・ここまで来て,ようやく面白くなってきた。しかしもう残すところ20ページ足らず。(´△`;)