Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Paul Auster ”The Book of Illusions” 310~311p -16 読了

事件の後日談。事件は'88年の出来事なので,そこから現在'99年に至るまでの経緯。Almaの葬式,埋葬(墓石のところでちょっと泣けた),Chateaubriandの翻訳完了から,'92年Hector作品のビデオ化,'94年Hectorファンクラブ結成まで。その後もZimmerは沈黙を続けるが,'99年に起こった2度の心臓発作を経て,この作品を書くこととなったという次第である。

そうした時を経ながらも,何度も事件のことを振り返る。Almaと過ごした期間はたった8日間。しかもうち5日間は別れて過ごしている。厳密に考えると,いっしょにいたのはたった27時間。その短さ故に,何度も何度も思い返す。そうした熟考のうち,Hectorは自然死ではなくFriedaが殺したのではないかという推論を導き出す。また,そもそもAlmaが一度はHector自身が盗み出した彼のトーキー時代のフィルムを全世界に送り返したこと,Hector死亡後の異様なAlmaの落ち着き方等から,ある種の希望(それが何かは読んでのお楽しみ)をも見出そうとする。そのことがZimmer自身の生きる糧ともなる(ここもなかなかグッと来る)。絶望的な状況で,ほんのわずかな希望が残されるという,いつものAusterの手法に今回も打ちのめされる。ま,そういう気持ちを味わいたくて読んでるようなものなのだが。

300ページを越える大作とあって,こりゃ長丁場になるかと思いきや,最初から最後まで話の展開に引っ張られ,2週間余り飽きることなく楽しみながら読めてしまった。”Moon Palace”に比べると身を削られるようなインパクトは少ないが,何かが心にホロリと残るという感じ。円熟の味。その違いは,Irvingでいうと”The World according to Garp”や”The Hotel New Hampshure”なんかと”A Widow for One Year”の違いに相当する。村上春樹の「月曜日は最悪だとみんなは言うけれど」によると,Irving自身は確実に自分の小説は上手くなっていると語っているそうだが,Austerならどう語るのだろうか。いずれにせよ,どっちを好むかは読み手次第だ。

さて次の予定は…

The Namesake: A Novel

The Namesake: A Novel

'99年のピューリツァー賞を取った前作”Interpreter of Maladies: Stories”が良かったので。Lahiriはロンドン生まれのインド系アメリカ人。お姿の大変よろしい方である(同い年なのよ)。

○Jhumpa Lahiri ”the Namasake”1~16p。