Home Again

4LDKマンションのインテリア変遷キロク

Paul Auster ”Oracle Night” 12~24p -2

話の主軸となるのは,1982年から始まる作家Sidney Orrの退院に端を発する出来事。それと平行し20年後の視点から,それぞれの出来事や人物について詳しい注釈が付けられている(これが結構なボリューム)。さらに,主人公Orrが青いノートに書いている小説と,その小説内主人公Nickの元に届けられた幻の小説”Orcle Night”が絡んでいる。主人公が作家とか小説内小説といえば,John Irvingの作品が思い出されるが,4重構造まではなかったと思う。しかも,幻の小説の題はこの本そのもの題でもあるという,さらなる混乱を誘うような罠も仕掛けてあったりする。もう,作家の思うがままに翻弄されるしかないッスね,こりゃ~(^^)

主人公Orrは,友人の作家John Trauseに勧められ,ハメットの「マルタの鷹」に出てくるFlitcraftのエピソードを元にした小説を青いノートに綴っていく。Flitcraftは,何不自由のない生活を送っていたにもかかわらず,命を奪うような事故に遭う寸前のところでギリギリ助かるという出来事をきっかけに,今まで自分が築き上げてきたものをすべて捨て去り,新たな人生を始めようとする男である。OrrはこのFlitcraftを元にして,編集の仕事に携わる(それは妻Graceの仕事から思いつく)Nick Bowenという人物を作り出す。NickはFlitcraftと違い,仕事や結婚後5年を経過した妻Evaとの生活に満足しているとはいえない状態。

He had grown bored with his work (although he is unwilling to admit it). (中略)…his marriage has come to a standstill (another fact he hasn't had the courage to face). Rather than dwell on his burgeoning(芽ぐみ始めた) dissatisfaction,…

で,大出版社のエリート編集者でありながら,その実,エンジンの壊れたジャガーの修理に2年も打ち込んでいるというような手仕事を好む男でもある。

ある日,彼の元に,かつての人気作家,故Sylvia Maxwelが1927年(この小説内小説では20年前に相当する)に書き上げたまま存在を知られてなかったという幻の作品,”Orcle Night”が届けられる。原稿が郵送で届けられたてからしばらくして,Nickの元を訪れてきた,Sylviaの孫(かつ原稿の発送主)Rosa Leigtmanに,Nickは衝撃的な一目惚れをしてしまう(それはそのままOrrが妻Graceに感じた衝撃なんだとか)。Nickは自分の気持ちをappease/なだめるためにEvaを食事に誘うが,何とそこでRosaと鉢合わせ。妻に彼女のことを説明するうちに,つい口を滑らせ,

She's the kind of woman who could turn a man inside out.

と口にしてしまう。もちろんすぐさま,これは一般的な見解で自分は違うよと言い繕うが,後の祭。2人の食事は散々な結果に終わってしまう。Nickは帰宅後,郵便物を出しに行ってくるよと鞄を手に家を出る。ポストに郵便物を入れた直後,突然Evaとの結婚生活が次々と思い出され,彼は初めて自分の結婚が失敗だったと悟る。

その時,Flitcraft sagaが起こる。突然11階建てのアパートから落っこちてきたガーゴイルの像が,右手に携えていたブリーフケースに当たった後,地面にぶつかり砕け散る。頭にでも当たっていたら,即死だっただろう。あまりの衝撃に打ちのめされたNickはそのままタクシーを拾い,当てもなくLa Guardia空港へ。いちばん早く飛び立つ予定のカンザス・シティ行きの便に乗り込み旅立ってしまう。

…結婚生活云々の話は,なかなかうなずくモノがある。取っつきにくいなぁと感じた小説だが,読んでるうちに引き込まれていくだけの面白さはあるように思う。なんと言ってもオースターの小説なんだものね。(^▽^ケケケ